BH鋼の仕上げは、後のない最終工程ですから「お客様からクレームがこないようにすること」、これが大命題です。仕上げというのは、グラインダーで削ったり、溶接で補修したりと、いくつもの作業をこなしますから、チームでやらざるを得ません。しかも、いかに正確に早く作業するかが一番求められてもいます。
ここの技能工は、何でも出来る昔の鍛冶屋に近い存在でしょう。ここではすべてについて、ひと通りやれることが条件になります。だから私のような10年、15年といった熟練工がここの工程を任されることが多いのです。
建築鉄骨のスタンダードな仕上げ方はあるのですが、これにプラスしてBHならではの仕上げがあります。溶接の不具合には、ピット、オーバーラップ、アンダーカットなど20種類以上あって、まずはそれに対応しなければなりません。
一方、超高層建築などでは鉄骨軽量化の為、必要な部分の板厚を厚くして、軽くても必要な強度をもった特殊なBHを使用することがあります。鉄骨では溶接する鋼鈑の厚みによって、溶接の大きさ(余盛り)が決められています。途中で板厚が変わるBHでは、異なる大きさの余盛りを滑らかにつなぐために、溶接、ガウジング、グラインダなど、豊富な経験と技量が必要です。
前工程の不都合を全部引き受けて直すわけですから、仕上げ工程では技量の他に忍耐力も必要です。チーム全員が、ここで優れた技能工になってほしい。それが私の一番の望みであり、また課題でもあります。
もちろん、しっかり技術を覚えてもらうには、叱って厳しく教えます。耐えられなかった新人もいますが、仕上げ工程が務まれば、何でもできるようになります。その気持ちで取り組んでいれば、必ず上達すると思いますよ。
未経験者は、ある程度までは育てられますが、それから先が難しい。努力家でカンのいい人は上達が早いですが、そんな人はほとんどいませんからね。