鋼と創造

熟練工の技
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こだわりの技術開発
第1回
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鋼と創造 BHの製作は、鋼そのものを知ることから始まる。
鋼と語り、鋼と折り合いをつけ、人の力を鋼の力に替えていく。
その品質を支えるのは、最新の設備と人の技である。

桂スチール技能工シリーズ 熟練工の技
河原 利彦 写真
「SAW溶接の名工」
河原 利彦 Kawahara Toshihiko
取得資格: 玉掛け、クレーン運転士、ガス溶接、半自動溶接、研削砥石取替
できあがりを見た目で分かるようになれば一人前

サブマージアーク溶接をやっている最中は、アークを作っている箇所に、フラックスという大気の侵入を防ぐ粒状のもので覆い、そのなかにスラグという不純物ができています。そのため実際のビード(溶接線)は見えません。だから、できあがったものを見て、どこがどうなっているか、自分で分かるようになったら一人前です。スラグがまっすぐにできず左右どちらかに曲がっていたり、山形やお椀形のいい形のスラグができていたりを見て判断しています。どんなに才能があっても、溶接をはじめてすぐには判断できません。形のいいスラグを作るには、経験の上でのセンスが必要ですね。



条件をきっちり守っているか、正確に設定されているか

SAW(サブマージアーク)溶接装置には、アークを作る先行と後行の2つのトーチ(先端器具)があって、溶接ビード巾(電圧)や溶け込みの深さ(電流)、それと速度を調整して溶接しています。企業秘密ですが、条件にあわせた独自設定があって、現場ではまず指示書通りに条件をきっちり守っているか、装置を正確に設定し、その通りにやっているかを第一としています。溶接装置の前方にセンサーが付いていて、その後ろからトーチとワイヤ(溶接材)が続きますが、方向を調整しないと一定のビードは作れません。母材が溶接の熱で自然に曲がってしまうからです。
また、厚板になるほど広いビード巾が必要なので難しいですね。堤防に使われた80mmのBH鋼の溶接では、緊張しっぱなしでした。



後工程で仕事を作らないように集中力を持って進める

電流・電圧・スピードが一致しないときれいな溶接はできませんが、それには集中力を高めた作業が欠かせません。溶接は手を加えて直すほど条件が悪くなっていくため、一発勝負の作業です。溶接の質が悪いと、後工程での仕事を増やすことにもなるので、特に夏場の暑い時期には、集中力を切らさないように注意します。後輩の育成には、まず仕上がり形状を見せてきちんと説明します。
どうしたらこうなるのか、条件にあわせてどう調整しているかを現場で一人ひとりに教えていきます。見えないところで溶接されるので、カンどころをしっかり伝えていくしかないんです。



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