鋼と創造

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鋼と創造 BHの製作は、鋼そのものを知ることから始まる。
鋼と語り、鋼と折り合いをつけ、人の力を鋼の力に替えていく。
その品質を支えるのは、最新の設備と人の技である。

ガスで鉄板が切れるのは、なぜ?

厚い鉄板を、プロパンガスで切るの?
家庭で使っているプロパンガスでは、鍋底に穴もあきませんね、
なのに工場ではどうして同じプロパンガスを使って
あんなに厚い鉄板が切れるのでしょうか?

燃焼ガスだけでは鋼を切る熱エネルギーは足りません!

例えばプロパンガスやアセチレンガスなどで、どれだけ長時間鋼板を切ろうと加熱しても、決して赤くならず、切れもしません。不思議ですね! なのに、そこへ酸素を加えると、なんと!僅かな時間で鋼は溶け出します。


■ガス切断は鋼の酸化反応

溶断で吹き飛んだ鋼の量と、その同じ量の鋼を溶かすのに必要な熱エネルギ-値では、比べものにならない程、大きな差がある事に驚かされます。 この差が酸化反応に依るものだと考えられています。(図1)



鋼は、ガスのエネルギーと酸素の力で切れるのです!

鋼を切断するには、まず、切断開始面を余熱します。(図2)
その真っ赤に熱した鋼のプ-ルの中に、高圧酸素気流を吹き付けると、鋼と酸素との間に急速な科学反応が起こり、鋼は燃焼しスラグとなって溶融すると同時に、酸素噴流の機械的エネルギ-によって数十ミリもある鋼板が切れていきます。(図3)



実際のガス切断のしくみと火炎調整
■ガス切断のしくみ

鋼板面が発火温度900度に達したら、そこへ高純度の酸素を吹き付け鋼材を燃焼させ、その熱で更に鋼材を溶融させると同時に、燃焼生成物と溶融金属とを切断酸素が持つ機械的エネルギ-(噴出力)で吹き飛ばします。
この火口を連続的に移動させると溝状に鋼材が除去され、これがガス切断となるのです。(図4)


■ガス切断の火炎調整

ガス切断の火炎は下図の様に調整します。(図5)



<技術参考>

●A.鋼の含有元素がガス切断に及ぼす影響

元素名 切断性 備考
1.炭素 C 0.3%以下なら問題ないが、それ以上は、硬化、割れの原因となるため、300℃程度に予熱を要する。  
2.珪素 Si 過度に炭素が含まれていなければ、珪素は切断に影響をしない。 Siが4%でもCが0.2%あると切断は困難。
3.マンガン Mn 14%Mnで1.5%C以上は切断困難、予熱を すれば、切断範囲は広げられる。  
4.ニッケル Ni 7%以下なら容易に切断出来る  
5.クロム Cr 切断は難しいが3.5%以下なら可能  

●各種ガスの発熱量は次のとおり

NO ガスの種類 発熱量
(Kcal/M3)
最高火炎温度
1 アセチレン(工事現場で多用) 12,690 3,430
2 水素 2,420 2,900
3 14%Mnで1.5%C以上は切断困難、予熱を すれば、切断範囲は広げられる。 20,780 2,820
4 メタン 8,080 2,700
5 一酸化炭素 2,860 2,820
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